祇園点景

福玉

紅白の福玉もろて舞妓さんの一年のしめくくり

比叡山から吹きおろす北風が一日ごとに冷たくなって、時雨がみぞれとなり、やがて牡丹雪が顔見世のまねき看板に散ると師走もなかば。十二月はほんとにきぜわしいといっているうちに、はや「事始め」の十三日がきます。

事始めとは、お正月の準備(事)を始める日。冬至も目の前、日は短くなるわ、仕事が多くて猫の手も借りたくなるわ状態のこの日から、京都の人は「お事多さんどす」と、ねぎらいの心をこめて挨拶をかわします。
昔はお歳暮を贈る日とされていたとかで、祇園の花街でも、この日舞妓さんや芸妓さんが鏡餅を持ち、師匠の井上八千代師宅へお礼に行くのがならわし。師走の新聞紙面を飾ったりします。

舞妓さんの一年のしめくくりは、日ごろお世話になったお茶屋さんへの挨拶まわり。お茶屋さんでは、日用品や干支の置物などを入れた福袋ならぬ、紅白の「福玉」を用意。馴染のお客さんからのお年玉として贈ります。もちろん数が多いほど売れっ妓の証拠。福玉は正月元旦にあけるのがきまり。何が入っているのやら─。

京なれやまして祇園の事始め(水野白川)せわしゆうて、楽しき事多き祇園の師走です。

福玉

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