祇園点景

イノシシ寺

またの名、イノシシ寺。またの名、まりしてんさん

猪にまつわる言葉には、猪突猛進とか猪武者という勇ましいものがありますが、古来、山の神とも、多産なので農作にも縁が深いとされ、神使とする寺社名刹も少なくありません。

上京区の護王神社の前には、狛犬ならぬ祭神和気清麻呂公の神使である狛猪が鎮座し、火の神さま愛宕大権現の守護もまた然り、猪の背に乗る摩利支天です。
猪は火が大好きな動物で、火を祭る地には群れるとか。亥の日に炉開きをするのもこうした由来によるとのこと。萩と猪の図は花札でおなじみですが、火防せの神愛宕さんは、また萩の名所でもあるのです。

祇園の一角にある建仁寺の山内塔頭の禅居庵は、通称「まりしてんさん」。六臂の愛らしい童女像が、にらみを利かせつつもどこか愛嬌のある七頭の猪の背にすわっています。摩利支天の使わしめが猪であることから、縁日は毎月初めの亥の日、十月二十日の大祭には秘仏が開帳されます。

一般に摩利支天は天女像のほか、武士の信仰を集めた忿怒形のものが多く、開運勝利を願う人、また家出人の「足止め」を願い猪の足におみくじを結ぶ人も。境内には信者寄進の猪の像も五体ほど。別名イノシシ寺と呼ばれるゆえんです。

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