祇園点景

結びの美が咲く

だらりの帯

京都にゆかりの深い文人たちのなかで、PRの貢献度が高く好感度もいいのは、都をどりの作詞と「かくかくに祇園は恋し…」の歌で有名な歌人・吉井勇か、「祇園恋しやだらりの帯よ」の『祇園小唄』の作詞者であり、一連の「祇園もの」で知られた耽美作家の長田幹彦でしょうか。

京という言葉とともに誰もが連想するのは花かんざしを飾り、白い襟足をのぞかせ、友禅の振袖にだらりの帯を締め、おこぼを鳴らして街を行く舞妓さんの後ろ姿です。

祇園情緒をさそうこの装いは、幕末の町娘の風俗を取り入れたもので、だらりの帯は江戸時代の女形俳優、上村吉弥が考案した吉弥結びを真似たものとか。

お座敷の衣裳は、素肌に肌襦袢をまとい、緋ぢりめんの裾除けをつけ、長襦袢を重ねて、赤に襟つけを。さらにその上に振袖を着て体の曲線を美しく見せるために、胸の下から腰へさらに薄い布地を巻き、帯を締めます。

帯の長さは約5メートル、重さは20キロ。結ぶのはかよわい女手では無理。男衆(おとこし)さんの手で、結びの美の極致「だらりの帯」姿が完成します。友禅の振袖に西陣織の丸帯…。舞妓さんの衣裳は溜息が出るほど贅沢で、見惚れるほど素敵です。

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