祇園点景

こんにゃく

こんにゃく問答ならぬこんにゃく利益

師走、南座にあがった「吉例顔見世興行」のまねき看板や、石焼きいも屋を目にすると、ふいと口をついて出たりするのが「芝居、こんにゃく、いも、たこ、なんきん」という古くからの言葉です。いもやたこ好きの男も多いはずなのに、なぜかこの言葉の上には、「女の好きなもン」とつきます。

京都の女性は物の名に「お」や「さん」をつけて呼ぶことが多いのですが、十二月八日の針供養の日に登場するのが、女の好物の一つ、「おこんにゃ」こと、こんにゃく。
固い革や布を縫って疲れた針を、柔らかいこんにゃくに刺して、「ありがとうさん」とねぎらい、いたわり、感謝します。むかしは、人参、大根、小芋、もみどうふ、おこんにゃ、ごんぼのささがき入りのけんちん汁や関東煮、おすもじなどを供養のご馳走としていただいたものでした。

こんにゃくといえば、年明けの一月六・七日の両日、八坂庚申堂で催される「庚申こんにゃく祈祷」は大いに賑わいます。ご本尊は、三つ眼に虎皮の褌姿の青面金剛仏。六十年に一度のご開帳という秘仏ですが、一生に一願すれば必ず成就とか。堂の前の金網に結びつけられた、金剛仏のお使いの猿を表した「くくり猿」の多さが信仰の深さを物語っています。

こんにゃく

ページ上部へ