祇園点景

情緒漂う石塀小路

誰もが無口になる散策路

八坂神社の南楼門から、霊山護国神社参道までの間を南北に走る通りを下河原通りとよびます。江戸時代の初めまでは、北の菊谷川と南の清水川とに挟まれた河原だったという話で、通りの名の由来とされています。

かつてこのあたりには、大坂城の落城後、高台寺に入った北政所を慰めるため、徳川家康が配慮したという遊芸の達者な女たちが住んでいました。豊臣家の存続をひたすら祈る日々のなかで、政所はしばしばこの女たちを召して楽しんだのだそうです。

没後、この地は下川原遊郭となり、明治19年に祇園新地と合併後は静かな住宅地に変貌しました。往時の情緒をとどめているのが通称“石塀小路”と呼ばれる一画です。

下河原通りから高台寺下の“ねねの道”へ抜ける小路で、敷き詰められた細い石畳の小路の両側に、生垣を茂らせた石積みや石垣づくりの構えの旅館にお茶屋さんが隣り合って軒を並べ、しっとりとした情緒を漂わせています。

人通りの少ない静かな鍵状の道をたどるとき、誰もが無口になり、時を忘れてしまいます。小糠雨がしとしとと石畳を濡らす日、牡丹雪があわあわと石畳に溶ける日の探訪が特におすすめです。

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