祇園点景

春の東山

春四月、そろそろおめざめ ふとん着てねたる東山

時代が変わり、人々の暮らしが変わっても、目をあげると、昔通りの姿で語りかけてくれるのが京の三山。

北山、西山、東山のこの三連山のなかで、とりわけ、私たちにとって最も身近な存在で、街に向かい、ゆったり、おおどかに寛ろいでいるかに見えるのが東山です。

清少納言が千年もの昔、「やうやう白くなりゆく山ぎはすこし明かりて紫だちたる雲のほそくたなびきたる」と詠嘆しつつ、仰ぎ眺めたのは東山だったのではないでしょうか。

俗に東山三十六峰といいますが、三十六峰とは、どこのどういう名の山をさすのか、どう数えるのかは諸説あり定かではありません。「山紫水明」で有名な頼山陽の筆名が「三十峰外史」だったので、広めたのは山陽ではとの説もあるようです。「東山三十六峰、静かに眠る丑三つどき、鴨の河原のしじまを破り、にわかに起こる剣戟の響き!」という例の時代劇映画の活弁あたりがルーツかも。

枕草子風に「春は、あけぼの」といきたいところですが、京の3・4月の早暁は、東山の景観を楽しむには肌寒い。日昇後にゆっくりと対面。「いとおかし」を体感しましょう。

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