地蔵盆
盂蘭盆は、大人のお盆 地蔵盆は、子供のお盆
京都ほど地蔵信仰の多い土地はありません。お地蔵さんを本尊として祀るお寺や、風変りなお地蔵さんの俗称で呼ばれる寺も実に多い。霊験あらかたで、現世ご利益大というありがたいお地蔵さんが洛中には目白押しです。
町内には、唐破風屋根のお厨子や小さなお堂があって「卍」の字を彫った石の土台にのせられ、町内の回り持ちで、燈明や香花が供えられています。白粉と口紅をつけ、赤い涎掛けもつけたお地蔵さんは愛らしい。
辻々に名も無いお地蔵さんがあるのは、悪霊を防ぐという塞の神(幸の神、戈の神)と、衆生済土の地蔵尊が一緒になったとも。塞の河原は、この世と彼岸との境目のことで地蔵が、石を積む子供を鬼から救うという地蔵信仰は、冥界へ子供を送りたくない親の心情から生まれたとも考えられるのでは─。
京都の子は「うら盆は大人のお盆、地蔵盆は子供のお盆やで」と昔から言い聞かされてきました。子供たちは「南無地蔵大菩薩」などと書かれた提灯を持ち寄ったり、行灯に絵を書いたりしてひたすら待ちます。大人たちも1ヶ月前から準備に怠りありません。
8月の23・24日には、西瓜、芋、ほおずきなどの供物がお地蔵さんの前に並び、路次が1年で一番賑わう日です。知恵をしぼったアトラクションがいっぱい。「小ごおろし」という福引きをする町内もあります。 輪になって座り、百万遍の数珠をくる子供たちの元気な声が夜半遅くまで賑やかです。
京で子供時代を送った人は、誰もがこんな幻燈のような懐かしい思い出を持っているのです。