祇園点景

奇縁氷人石

迷い子、落とし物は こちら奇縁氷人石

路次から路次へ、寺社から寺社へ、祇園散策の道すがらの楽しみは、しばしば不思議なものに出会えることです。

近年、境内の混雑を避けるために南楼門の外、西側に移されましたが、元々は八坂神社の舞殿の東、「平家物語」のエピソードを秘めた忠盛灯篭と同じ結界内に立っていた「奇縁氷人石」なる長方形の石灯籠などはそのよき一例です。
石の左右の側面に、それぞれ「尋方(たずぬるかた)」、「教方(おしゆるかた)」と刻み文字の入った一種の告知板で、むかしは参拝客や、人で混雑する土地にはこうした石が建てられたものとか。

新京極六角の誓願寺の前と、天神さんの茶室の庭にも一基、同様のものがあります。迷い子や落とし物を探す人と、教える人の相方の仲人役をする石なので、一名を「月下氷人」。今なら交番といったところでしょうか。

裏面に「去る庚寅年(天保元年)のころは五穀の実り少なく…」とあり、「奇縁によりて世人のなげきを救わんとす」という文字が見えることから、飢餓のない日々を願って建てられたものと推察できます。

落とし物をしてなかなか見つからないときなどには、ためしに貼紙を。レイケンあらたか?教ゆる方の拾い主が現れるやもしれません。

奇縁氷人石

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