槿
八坂神社ゆかりの花「槿」咲く、京の夏
酷暑・炎暑・刧暑・猛暑‥‥こうした言葉で言い表わせないのが、ご存知の京都の夏の蒸暑さです。
軒に風鈴、座敷に青すだれ、表や玄関に打水など涼を呼びこむ工夫や手段をさまざまにこらしながら、京都人は長年、この季節を耐えかつ楽しんできました。
「暑おすなァ」と溜息をつきつつ例年乗切れるのは、一大ページェント祇園祭あってのことかも。祭りの力は偉大です。
お囃子が流れる炎天下、塀越しにのぞく朝顔や槿(むくげ)の白い花を見ると、涼風を感じてほっとします。
槿は、アオイ科を代表する花木で、古来から八坂神社とゆかりの深い花です。神社で授与される鈴つきの護符を「祇園守(ぎおんまもり)」と呼ぶことから、俗称を祇園守ともいい、神にゆかりの花として尊ばれてもいます。
八坂神社では、献花はすべて槿を飾るのがならわし。祇園祭には、「お花」と称して神前に槿を御饌花されます。
平安時代、邪鬼を払う卯杖に用いられたという槿。「槿花一朝の夢」という言葉通り、はかない花の命なれど、神との長いゆかりを秘めて、祇園祭と槿のある、京の夏です。