狛犬
八坂さん南楼門に、必見の狛犬あり
小学校がまだ尋常小学校と呼ばれていたころ、国語の教科書に「こまいぬさん、あ。こまいぬさん、ん」という頁がありました。
狛犬は高麗渡りの高麗犬を意味し、社殿の前に向かい合ってすわる一対の獅子にも犬にも似た獣の像をいいます。
一方は口をアの字に開き、もう一方はウンの字につぐんでいます。息がぴったり合うことを「阿吽の呼吸」といったりしますが、まさしくこれから出た言葉。もとは梵語で、魔除けの意味を持っているそうです。
「あ・うん」は狛犬だけの特許ではありません。社寺のなかには、同様の口の相をした勇猛な金剛力士が山門に仁王立ちしている例も─。
八坂神社でも、南楼門をぬけるとまず出会うのが石の狛犬像。八坂神社には石のすぐれた建造物がたくさんありますが、実はこの狛犬は身替りの狛犬。源頼朝が奉納したと伝えられる本物の狛犬は、鎌倉時代の特徴をみごとに表現した木彫作品で、一方は頭に一角を高々と、一方はたくましく尾を上げて対峙しています。
木製の狛犬は、日本では非常に珍しく、重要文化財に指定され、ただいま京都国立博物館で常設展示中。複製の狛犬は、金網の中で日々、立派に影武者をつとめています。