白川女
花の香のせて 白川女の花売り
わしが在所は京の田舎の片ほとり…。という俗謡があります。かつて在所から京の町なかに商いに出てきた女性たちがありました。大原女と桂女と白川女です。
壇ノ浦で安徳天皇とともに海中に身を投げ、源氏に救われて仏門に帰依。洛北大原の寂光院にかくれ住んだ悲劇のヒロイン『平家物語』の大原行幸で有名な建礼門院にゆかりの深いのが大原女です。
侍女の阿波内侍らが、生計の足しにと裏山で取った柴を売りに出たのが大原女のはじまりとか。頭に黒木をのせ、脚絆を前に結んだ足でゆっくり調子を取りながら「黒木買わんせ 黒木召せ」と売り歩く容姿には情緒と気品がありました。
桂女の先祖は、神功皇后の三韓遠征のさいに同行し、皇后のお産の世話をしたといわれ、腹帯を模した「桂包み」を頭に結ぶのが特徴でした。
少し前まで見かけることができたのは白川女です。清楚な姿で、朝摘みの花と自家製の番茶を入れた藤の箕を頭上に載せ、「花いりまへんか~」と唄うような売り声とともに街を流していたとか。やがて大八車からリヤカーになり、交通事情から今では軽トラックでお得意さんの家を訪れます。普段は主に仏花を、年の暮れには注連縄なども扱います。
時代祭の行列のなかに、往時の働き女(め)の風俗がしのばれるのが幸いです。